「大丈夫だよ。何があったか知らないけど、そんなに心配なら俺が行く」


「えっ!?」


「その為にバイヤーチームの一員になったんだろう?」


リーダーとしてはまだまだと思う結実を確かに頼むと言った。でも、俺が彼女を救いに行きたい。


「お前にはまだ研修講師の仕事が残ってるんだろう。新人を放っとくなよ」


「社風に関わる」と言い、カトー研究所の住所を津田さんに尋ねてる。


こんな時、どうして俺は営業部に居ないんだ。

どうして結実をチームリーダーなんかにした。

結実のことを考えれば、本来は自分が残るべき地位だったのに……。




「浬」


山瀬さんの名刺を手にした山本が出てきた。
情けない顔つきの俺にニヤつき、「今度奢れよ」と肩を叩いた。


「頼んだぞ!」


側をすり抜ける背中に声を飛ばした。


お願いだから結実を守ってやって欲しい。

何もないことを心から願ってる……。



「くそっ!」


拳で壁を叩く。
悔しいが仕事に穴を開ける訳にもいかねぇ。



「……あの、天宮元リーダー……」


怯えるような雰囲気で後ろから声をかけられた。
息を一つ吐いて振り向くと、背の低い女子がホッとしたように微笑む。


「済まなかったね。商談中だったのに邪魔をして」


いつも結実の側で仕事ぶりを学んでる彼女に謝った。
ブラウンヘアの津田さんは「いいえ」と嬉しそうに答えた。