「メーカーにサンプルを引き取って貰うよう手配して欲しいと言ったら『分かりました』と言って電話を切ったよ」


「そのメーカーは何処ですか?」


「面白グッズを主に開発してる研究所があったろう。山瀬とかいう口の上手い営業マンがいるメーカー」


「山瀬さん!?」


「何だよ。知り合い?」


だったら電話をかけておけば良くない?と単純に笑う。


「すみません。失礼します」


背中を向けて営業部へ走った。
面白グッズを作り出すので有名な「カトー研究所」の山瀬という男は、口が上手くて頭も切れるが、女に手を出すのも早いというので有名なんだ。


そんな所へ結実が一人で行ったのか?
しかも、あんな格好で?



(山瀬の野郎…結実に触れたら殴ってやる!)





「津田さん!」


営業ブースに入った途端、声が響き渡って部内の連中を驚かせた。

商談中だった津田さんはオドオドと立ち上がり、引き攣るような表情で「はい…」と手を挙げた。


「結実にすぐ戻るよう連絡してくれ。カトーには俺が行く!」



「えっ!?」



「おい、待てよ」


ポンと肩に手を置かれて引き止められる。
煩い!と振り返れば山本が立ってた。


「どうしてお前がしゃしゃり出て来るんだ。人事部に異動したんだろう」


「でも、結実が危ない……」