トラブルだとしたら一体何が起こった?
信頼を寄せる後輩にまで噓を吐いて、一体何処のメーカーに行ったんだ?




「おーい、天宮君!」


喫煙コーナーから人事部へ戻る途中で声をかけられた。
振り向いてみると、山本が前にいた店舗運営部の部長だ。


「松田さん、どうかしましたか?」


営業で働いた頃にはお世話になってた人だ。
名前で呼んでくれてもいい…と言うくらい、気さくな性格なのは知ってる。


「いや、あのな…さっきは嫁さんを怒鳴りつけて悪かったな」


申し訳無さそうに謝りだす。
何のことかと謎過ぎて、口を挟まずに目を向けた。


「サンプルが1000個も届くなんて初めてだから驚いたんだよ。バイヤーチームに電話をしたけど昼休みだから誰も居ない言われて、誰でもいいから大至急連絡を寄越して欲しいと伝言を残した。
俺はてっきりウチにいた山本のミスかと思ったんだけど、電話をかけ直してきたのが君の奥さんで、待たされた分の怒りも浸透してたもんだから、つい大声で怒鳴っちまってさ…」


いやー悪かった…と後頭部を掻きながら謝ってる。
俺はもうバイヤーチームの人間ではないんだから、謝られても困るが。



「……あの、それでうちの妻はなんて…」


さっきの山本の話を思い出して聞いた。