おはようからおやすみまで蕩けさせて

震える指先に力を入れつつ、出掛ける準備を始める。
やっと自分が取るべき行動が理解出来たのにこんな事態になるなんて……。


「大丈夫ですか?一人で何処へ行かれるつもりです?」


行く場所を教えたらミスがバレる。
リーダーが自らミスしたなんて噂されても困る。


「ちょっとメーカーさんの所へね。急いで見せたい商品が出来たんだって」


ミスを隠した上にウソまで吐いて、私は何処までサイテーな上司なんだろう。



「ごめん。お願い」


フラつきながらブースを出た。
出入り口で誰かとぶつかりそうになったけど、そんなの構ってる余裕もない。


このミスだけは天宮さんの耳に入って欲しくない。
能力の低い私にリーダーを任せた責任を、彼が問われたらイヤだ。



(たから、自分の力だけで何とかしないと……)


やりきれない気持ちを持ってオフィスビルを飛び出した。


営業部に配属されて八年目。
初めて本気でヤバい…と焦ったーーー。