社食で昼食を済ませてから戻るとデスクの上にメモが置いてあった。


『大至急、店舗運営部の松田部長へ連絡を』


誰の字かは分からないけど、店舗運営部といえば前に山本さんがいた部署だ。
チラッとデスクに目を向けてみても、彼はまだ休憩から戻ってきてない。


もしかして何かしでかしたの?と思いながら内線番号をプッシュした。
女子社員が引き継ぎに出た後で、不機嫌そうな声が聞こえてきた。


「松田だ」


低くて威圧感のある声にビクッとなりながら「キッチン部門の天宮です」と返事した。


「あの、何かありましたか?」


店舗運営を預かる部署から電話があるなんて珍しい。何か困った事態でも起こったのだろうか。


「何かなんて呑気なこと言ってる場合じゃないよ。サンプル商品1000個も頼んだ馬鹿者は誰だ!」


「えっ…」


「あんな売り物にも出来ない物を1000個も仕入れやがって、こっちは迷惑してんだが!?」


「な…何のサンプルですか?」


イヤな予感が頭の中で渦巻く。
そう言えば昨夜、サンプル商品を幾つか入力したーー。


「おにぎりカップとかいう下らない商品だ。ご飯を詰めて振ればおにぎりになるってやつ!」


それ…昨夜入力したもの……。


「サンプルなら精々100個もあれば上等だろう!店舗の社員に配って使い心地を試して貰うだけの物なんだから!」