その人のことは、名前がわからないので、イケメン大学生と心の中で呼んでいる。

目の前を通り過ぎて行くとき、微かに香る香水の匂いがした。

いい匂いに、私の心を釣られてるような気分だ。

イケメン大学生は、私の並ぶ列で電車を待つ。

これも、計算済み。

だいたい乗る場所って決まってるもんだよね。

ニヤける顔を堪えながら、やってきた電車にイケメン大学生と、乗り込んだ。

東京の電車は、ちょっと混雑する。

学生だけじゃなく、サラリーマンやOLたちも電車通勤が多い。

東京の人は、交通機関を使う人が多い。

私の使う地下鉄も、ぎゅうぎゅう詰めなんてことはよくあって、駅員さんが必死に押すことがある。

だけど、そのおかげで、イケメン大学生とかなり近づけるのだから、私には朝の憂鬱さはない。

今日は、だけどね。

ただ、電車が同じになっただけ。

知り合いでもないし、同じ高校でもなくて、あなたは大学生。

ただ、見てるだけの私の恋。

あなたに近づきたい、なんて思いながら、隣に立って窓の外を見ているイケメン大学生を盗み見た。

唯一、自然に近づけるのは、このひと時だけ。