「新人は、フロアの掃除ね」

「あの・・・中村っていいます」

「そう、中村さん、3番スクリーン、もうすぐ終わるみたいだからよろしくね」

顎で3番スクリーンを指すと、意地悪な笑みをした。

「・・・はい」

引き攣りながらも、笑顔を作って返事をした。

い、嫌な女ー!!

なんだあの笑顔、天使のフリした悪魔みたいだ。

神山さんも、見当たらないし・・・。

肩を落としながら、私は言われた通り3番スクリーンへ行った。

3番スクリーンの上映が終わり、お客さんのごみを受け取り、ごみ袋に放り込んでいく。

お客さんが全員出たのを確認して、掃除に取り掛かる。

ポップコーン、落ちすぎでしょ・・・。

椅子の隅々まで、念入りに掃除する。

「ひとり?」

低い男の声が聞こえて、ポップコーンを塵取りに入れていた手を休めて、視線を上げた。

ドキン!

いたんだ・・・。

見当たらないから、いないのかと思ってた。

「あっ、は・・・い」

ずっと会いたかったその本人に、話しかけられ、緊張のあまり声が震える。

入り口で、神山さんが箒を持って立っていたのだ。