「何か、嫌なところありますか?
直してほしいトコとか。」

「なんで?」
 彼は顔をぱっとあげ、首を少し傾ける。

「なんとなくっていったら語弊があるかもだけど。

わたし、気づかない内にやなことしてそうで。」
 日本語あってるかな、間違ってないよね?


「別にないけど。」

「…そっか。ならいんですけど。」
 でも速水さん気づいてる?


そう言いながら私に目を合わせてないこと。
ちっとも表情が柔らかくないこと。


触れてた手だって、



ぱっと離した……こと。



「市田の良いところつぶすようなこと、俺したくないんだよね。」

「え?」

「や、なんでもない。」
 そこで彼は誤魔化すように笑う。
この話はおわりねって続けて言いながら。

そう言われたらそれ以上追及できないことを彼は知ったうえで。


付き合うってこんなだったっけ。
嫌なことをそのままほったらかしにして、話し合うってことをしないままなぁなぁにお互いしたうえで。

速水さん。

ねぇ速水さん。



「そろそろ戻ろっか。
バレたら誤魔化しきれないし。」


「……うん、だね。」
 から笑いを私は浮かべた。


 電気を切って人気がないか確認すると先に彼が出る、運よく誰も廊下にいない。

「じゃぁごめんけど、手伝いお願いね。
気を付けて早く帰れよ。」
 彼は私の頭をポンと撫でる。

「うん、速水さんも。」
 先に部署に入ってったのは速水さんだった。