と、それから1分もたたないうちに、車のエンジン音が駐車場の入り口から大きく聞こえてきた。


わ!速水さん来ちゃった!
すぐに私は立ち上がって、若干汚れているだろうお尻をパンパンはらう。

彼はそのまま私の部屋の駐車スペースに車を進めた。慌てて私は携帯をカバンにしまい、運転席に駆け寄る。


 すぐに目がぱちっとあったので反射的にぺこっと私は会釈して、一方の速水さんはなぜかくすっと笑って、

「こっち」
 人差し指で助手席を指した。

「あ、はい!」
 言われた通りに駆け足でぐるりと車の後方から回り、そのまま助手席のドアを私は開ける。

「おはよ。」
 若干眠そうながらも挨拶してくれる速水さん。

「お、はようございます。」
 かくいう私は緊張口調。

うー、やばい。
挨拶してるだけってのにばかみたいに緊張してる。

心臓ばくばくいってるんだけど!


「晴れててよかったね。」
 続けて言葉を紡いでくれている速水さんにまたうまいこと返事が返せない。

「これ飲む?」

「へ?」
 若干びくつかせて彼に目線を合わせると、速水さんはコンビニで買ったと思われるアイスコーヒーを私に差し出してきた。


「ん。」
 有無を言わさず彼は私の手中にそれを収めてくる。

飲んでいいよってことなんだろうけど、
なんだろうけど……


「飲まないの?」

「あ、いや……」
 絶賛どぎまぎ中なんだってば、速水さん!

いきなり間接はハードル高いんだよー!
けど、ここで飲まないのは可笑しいよね。

「…いただきます。」
 速水さんのばか。
私はストローに軽く口をつけた。

「おいし?」
 彼の問いにこくんと頷く。


でも。
味がわからないってのが本音のところ。

どきどきして舌が麻痺っちゃってるよ。