え…、ナツ。

ドラムやってるんだ。

へー。

一緒にバンド組めたらいいのにな。

ナツが居てくれたら、私もこの3年間乗り切れそう。

よし。HR終わったら声を掛けるぞ。

他の人の自己紹介は聞き流して、バンドのことを考えてた。

HRが終わって、みんなが帰ろうとしてるとき、私はナツに声をかけた。


「ナツ。ナツってドラム叩けるんだね。」


「うん。中学の時にちょっとだけ習ってた。」


「それでさ、一緒にバンド組まない?」


唐突過ぎただろうか。

ナツが目を見開いた。


「…!?マジで!?」


「マジだよ。自己紹介聞いた時に一番にそう思った。」


ナツは嫌なのだろうか。私とバンドを組むのが。


「あ、いやだったらいいよ。無理にとは言いたくない。」


「いやいや、そんな訳ないだろ。めっちゃ嬉しい。俺もハルと組みたいと思ってた。」


──ズキッ。

胸が痛い…。

なんで…。

私はナツの中ではハルなんだから。

ハルじゃないんだから。


「ホントに?良かったー。断られたらどうしようかと思った。」


私は、その場でヘナヘナとしゃがんだ。

良かった。

第1関門突破。


「これで、ギターとボーカルとドラムは揃ったな。」


ナツが言った言葉に違和感を感じた。

なんで、知ってるの?

私がギター弾けること。

自己紹介でもそんなこと言ってなかったのに…

歌のことだって…


「なんで、私がギターとボーカルやってる事知ってるの?」


唐突に聞いてみた。


「え?ハル、知らないのか?」


「何が?」


「ハル、俺の中ではかなりの有名人だぞ?」


「え?」


何でなんだ…。

事務所にも所属していないのに、なんで有名人なんの。


「ハル、中学の時によく駅前で弾き語りしてたろ?」


「う、うん…知ってたんだ。」


そうだ、一時期前に駅前で弾き語ってた。


「うん。よく駅前に見に行ってた。ハル、めっちゃ上手かった。ずっと、バンド組めたらいいのになって思ってた。だから、ドラムも習ってた。」


「でも、なんで高校がここって……。」


「あぁ。それはたまたま。掲示板の時はビックリしたよ。隣にあの子がいると思って。」


良かった。

ストーカーじゃなかった。


「そうなんだ。ずっと私のこと憧れてくれてたんだ。ありがとう。」


照れくさいけど、お礼を言った。