_20XX年4月7日


「いってきまーす」


今日から高校生。ずっと、夢見てた高校生。

新しい制服、新しい靴、新しいカバン、新しい環境。
なにもかもが、新しいもので、気分は小学1年生だ。

おろしたてのローファーのつま先で、道を蹴る。その感覚に、心を踊らす。

制服を着た時とは違う、高校生になったと言う自覚を持つ。

これからの学校生活がますます楽しみになる。そんな気分でいたら…


「アスカ何やってんの、初日早々遅刻する気?」


後ろから、昔は高かったけど、最近声変わりをして、イマイチ声の出し方が微妙なハルが声をかけてきた。

ハルとは、小さい頃からの幼馴染みで、昔は私の方が身長が高かったのに、中学2年の時にハルが急激に成長して、今では身長差が、20cmにもなってしまった。


「うるさいなー。分かってるよ。」


ハルに言い返して、ハルの少し前を行き、坂道をくだり始める。

本当は、ハルのことを待っていたのに、それにも気付かないで、人を馬鹿にするとは。


「ごめんごめん。あれだろ?俺のこと、待っててくれたんだろ?ありがとな。」


隣に並んできた、ハルに頭を軽くポンポンとされて、胸がトクンとなった。

なによ、急に優しくしてきて…。

どうせ、私のことなんか 、なんとも思ってないくせに…。


「それにしても、珍しいな。お前が俺のこと待つなんて。中学の時は、俺の方がお前のこと待ってたのに。」


「そりゃ、新学期の最初の日だよ!?誰だって、早起きして、バッチリキメて登校しようと思うでしょ。特に、『お・ん・な・の・こ』は。」


実際には、いつもより早く目が覚めて、余裕があったから、春休みに一生懸命練習したメイクでもしてみようかと思ってしただけだ。

でも、ハルへの下心もあった。


「ふーん。で、お前もその中のひとりなんだな。」


ハルもやはり気づいていたらしい。それだけでも嬉しいのが女子なのだ。

春休みに頑張って練習した甲斐があった。嬉しくてつい、足取りが軽くなっていた。

今の雰囲気を崩さないようにと思って、平常心を、保つことに意識を集中させた。


「そういやー。お前、部活どうすんの。ずっと言ってた、バンド。組むのか?」


ハルが部活の話題を振ってきた。

坂道をくだり終わって、国道の道沿いを歩く。