あの日。

次の日。

今日は、土曜日。

昨日は入学式があった。

ハルと喧嘩をした。

そして、もう関わることがなくなった。


今日は、ナツとフユがウチに練習に来る。

これから、3年間を共にしていく人達だ。

ハルのことはもう忘れた。

ハルが好きだなんてことも忘れよう。

──コンコンッ

スタジオのドアをノックする音がした。

私はギターを弾く手を止めた。


「何。てか、誰。」


まだ、この時間に2人が来るのはまずない。

てことは、家族の中の誰かだ。


「オレオレ。」


オレって誰だよ。

柾輝(まさき)か。


「入っていいよ。」


──ガチャッ


「春陽となんかあったか?」


春陽。

久しぶりにその名前を聞いた。

春陽はハルの名前だ。

小さい頃からハルと呼んでいたから。

その名前を聞くと違和感を感じる。

兄の柾輝だけはハルのことを春陽と呼んでいた。


「う、うん…、まぁ……ちょっとだけ。」


「オレに話せるなら、相談しろよ。」


「分かった。ありがと。

あ、あのさ。」


会話に間があったのは、話そうとすることにちょっとだけ躊躇いを抱いたから。


「ん?」


「…。もし、あたしが男子とバンドを組むって言ったらどうする?」


気が引けたけど聞いてみた。


「はぁ??マジか。オレは別に良いけど…。なんで、そんなことを聞くんだ?」


「ちょっとね。」


「あ、もしかして、春陽が関係するのか?」


「うん…」


「言いたくなかったら言わなくても良いぞ。また、言いたい時に言えよ。いつでも聞いてやるから。」


「うん、ありがと。」


「なんか、邪魔したみたいだから、オレは出て行くな。」


──ガチャッ


柾輝がスタジオを出て行った。


妹思いの柾輝は少しばかりシスコンなところもある。

でも、それなりの優しさが私には身にしみるほど伝わってくる。

だから一度だけ、直接ありがとうと言うのが照れくさくて、歌にして返したこともあった。

そんな思い出に浸っているとまたスタジオのドアをノックする音がした。

今度は誰だろう。

時計に目を向けてみるともう約束していた12時になっていた。

お昼ご飯も食べずに部屋にこもっていたのは久しぶりだ。


「入って良いよー。」


私は、ナツとフユだと思って軽く入れた。


──ガチャッ


「お邪魔しまーす……うおぉーーー??すんげー??」


ナツを先頭に部屋に入ってくるや否、いきなり叫びだした。