大会が近いため
通常よりも試合形式の練習が多くなる

ちょいちょいと部長に呼ばれた。
近くに行くと、

「ねえ、ルミ、チカさんと試合してくれない?
他の子だとちょっとねえ

どうかな?」

と耳打ちされた

目が行けって言ってる…

それに了解と返して、
王子のところに行く


彼女はさっきから練習試合を組んでいないので
部員たちをじっと見ていた

そんな王子に声をかけると、
ヨロシクと言い、面をつけた

作法通り、互いに礼をした後に小股三歩、蹲踞に移る
目の前を見つめると、不思議と高揚感があった

そして思った、彼女は強い、と

主審役の部員からの始めっという言葉をきき、
蹲踞から素早く立ち上がり中段の構えを取る

そして、激しい攻防戦の末、私は勝った

試合に勝てたという喜びと
王子がここまでの実力を持っていたことへの驚き

腕には自信があったのに
ギリギリの接戦の試合だった

『高城さんは強いね
とても楽しかった
でも、次は負けないよ?』

「こちらこそ
王子がここまでとは思ってなかった
次も負けない」

『えっと、もしかして…?』

「あ、や、違うんだ!
王子というあだ名があまりにもしっくりしていたのでつい」

『喜ぶべきなのか、迷うなぁ
ボクのことはチカって呼んでよ』

「ああ、そうさせてもらう
アタシのことはルミでいい
よろしく、チカ」

お互いそう声をかけた