「知らねえのかよ」










「だからなにが」









静雅は溜息を吐いて、私を見た









「この学校には大きく二つのグループがある」









「…ふたつ」









「ひとつは"紅鬼"。全国No.2の族で、コイツらは正統派。実質この学校のトップだ」









「あか、おに」










「んでもってもうひとつが、"紫雲"。コイツらは紅鬼とは全く逆だ。噂じゃ強姦に薬、脅迫にリンチなどなど。結構酷いことやってるって言われてる」









「たかが噂だろ」









私がそう聞くと、静雅は椅子の背凭れに体を預け、ため息混じりに





「そうなんだが…元紫雲の幹部がこの前人殺して捕まってんのよ。だから一応目ぇ光らせてんの」








と言った













「あとはまあ小せえグループがいくつかあるけど…大体は紅鬼か紫雲と同盟組んでるか傘下に入ってる…いや、ひとつだけ違うな」









話している途中で、静雅はふと思い出したように呟いた





「俺もまだ実態は掴めてねえ。ソイツらは"黒蘭"。言うなれば風紀委員…てとこかな」










「風紀委員?」











静雅は体制を前にしながら続ける










「ここな、たまに他校のヤツらが喧嘩売りに来るんだよ。正直校内の喧嘩で手ぇ一杯なのに外まで行けるか!って思ってたら、いつの間にかその他校のヤツら帰ってたんだよ」









静雅はそこで一旦区切り、深く息を吐いて続けた










「んで、色んな奴に話聞いて、その他校のヤツらぶちのめしたって生徒と話したら『僕達は黒蘭という、族です。別に悪いことをする気はありません。深くは詮索しないでください』とかなんとか」









「今時んな族がいんのな」









「まあぶっちゃけた話俺ら教師陣も助かってんだわ。俺らも忙しーし」