彼女が顔を上げ、僕を見た。


「…………」

 僕は声が出ない。


「どうして……」
 彼女が呟いた。


 彼女の声に、僕の鼓動が激しく動き出した。

 僕は何をどうしたらいいのか分からない。


 咄嗟に口から出てしまった。


「ちょっと待ってもらえますか? 五分だけ!」


 僕は走ってホテルを飛び出した。


 えっと、車のダッシュボードだ…… これだ、これ! 


 僕の止まっていた時間が動き出したのだ。



 僕はレストランに急いで戻った。