「だけど先輩、仕事はちゃんと動いていますよね。俺、先輩が又、仕事にやる気が無くなっているんじゃないかって心配していたんですよ。だとしたら、とっくに地方に飛ばされているでしょうけどね」


「まあな…… 確かに、仕事に追われていた方が気が紛れるって言うのもあるけど、彼女に会った時、情けない姿は見せたくないだろ? せめて仕事くらいは…… 待っているって言ったんだからさ……」


「先輩…… でも、もう三年も経つんです。確かにあの時、雨宮さんは先輩に好意を抱いたかもしれません…… だけど、今はもう前を向いて新たな道を歩いて居るかもしれませんよ…… 先輩もそろそろ、前に進んでもいいんじゃないですか?」


「前になんか進めないよ…… 彼女、何処にいるんだろう? 元気なんだろうか?」


 僕は窓の外に目をやった。

 彼女の苦手な寒空だ……


「本当に……」

 神谷の声に、僕は益々彼女の事が気になってしまった。



「ところで神谷、どうやって見合い断ればいい?」


 僕はもう一度聞いたが、神谷は答えてくれなかった。