ピーッ、ピーッと機械音が耳に入った。

 僕は薄っすらと目を開けた。

 母の顔が擦れて見え、横におやじが居た。


「健人! 健人!」

 二人の声がはっきりと聞こえた。


「先生! 先生!」

 と叫んだのは、姉ちゃんの声だ。


 ケーシーを来た若い医師が、看護師らしき人と僕の顔の前に現れた。

 
「わかりますか?」
 医師の声に僕は肯いた。


 医師の手が僕の頭や体に触れた。


「もう、大丈夫です」

 医師の言葉に、母が両手で顔を覆った。

 その横で姉ちゃんが母の肩を抱いていた。


「ありがとうございます」
 おやじが何度も頭を下げていた。


 一体、何が起きているんだ? 僕は左手の指先が何かに触れているのを感じた。


 小さな箱のような物だ。僕は指でその箱を確認しながら、意識がハッキリと戻って行くのが分かった。


 そうだ! 空港へ向かっていたはずだ! 


 僕は小さな箱をしっかりと握り、体を起そうとした。