恋愛預金満期日 

「余計な事とは思いますが…… 海原さん、彼女が帰るのを待っていればいいじゃないですか?」


「えっ」
 僕はマスターの顔を見た。


「彼女以上の人は簡単に現れませんよ。きっと、明日も明後日も一年経っても、あなたは彼女の事思っています。それなら、待っていた方がいいんじゃないですか? 彼女が帰って来た時、彼女の気持ちが変わってしまっていれば、その時諦めればいい…… 余計な事を……」

 マスターは頭を下げ、カウンターへ戻った。

 僕は頭の中と心の中の整理を始めた。

 そうか! 彼女は帰って来るんだ! 何故、気が付かなかったんだ……


「頂きましょうか」

 パスタを皿に分け始めた、彼女の姿を見て僕は思った。


 彼女が間違っても、僕に待っていて欲しいとは言わないだろう…… 


 でも、僕が待っているのは自由だ!


「マスター、ありがとう!」

 僕は大きな声を出した。

 周りの常連客が笑い出した。


「僕、あなたが戻って来るのを待っています」

 僕は力強い目で彼女を見た。


「えっ…… でも、それは……」

 彼女は明らかに困っている。


「いいんですよ。マスターの言う通り、僕は明日も明後日も、一年先だってあなたを忘れる事は出来ない。だったら待っていた方が、僕は幸せです」

 僕の心は明らかに軽くなっていた。


「でも、気にしないで下さい。あなたは留学を充実させて下さい。勿論、僕の事など考えなくていいですから。でも、もし帰国する時、僕の事思い出したら、連絡下さい。必ず迎えに行きます」


「…………」

彼女は黙ってしまった。


「さあ、食べましょう!」


 僕はフォークを手にした。