恋愛預金満期日 

「ずるくなんかないですよ。あなたが僕の事を、そんな風に思っていてくれたなんて、想像もしていなかった。それだけで、僕には奇跡のような物ですから……」
 僕は彼女に笑って見せた。


「こんな話をしたら、笑われちゃうかな?」


「なんですか?」
 彼女は僕を見た。


「実は…… あなたが家へ来た時の記憶が僕には無いんです」


「えっ」
 彼女は驚いた。


「あまりに突然で、玄関に立っていたあなたの姿があまりに綺麗で…… なんていうか、僕には衝撃過ぎたんですかね…… あなたを見た瞬間、放心状態になってしまって………」
 
 僕は恥ずかしかったが、伝えなければ彼女が誤解したまま悲しい想い出になるのは嫌だった。



「まあ、気絶に近いですね…… 母親の怒鳴る声で、やっと我に返ったんです。もう、必至で追い掛けましたよ。だから、あなたが悲しむような事では無いんです。あなたが思っているより、ずぅーっと僕はあなたが好きなんです。あなたが突然現れたら、僕はこんな始末です」


「え―。覚えてないんですか? 私、てっきり常識が無いと思われているとばかり…… ちょっとほっとしたかな……」

 彼女は少しほほ笑んだ。


「それなら良かった……。あの…… 今更なんですが、聞きにくい事聞いてもいいですか?」

「ええ」