恋愛預金満期日 

「もう、そろそろ失礼します」

 彼女が席を立とうとした。


「もっとゆっくりして行って下さいな。とても楽のしいのに……」

 母が引き止めたが、彼女は席を立った。


「あっ。電池が切れておったんだ。健人買って来てきくれ」

 おやじが俺に向かって、車のカギを指差した。

 あ―。そう言う事か!


「送って行きます」
 
 僕は車のカギを持ち慌てて玄関へ向かった。


「でも……」

「どうせ、電池買って来なきゃだし」

 僕は彼女を車へと促した。


「すみません」

「あっ。免許証忘れた。すみせん、ちょっと待っていて下さい」

 僕は急いで家へと戻った。


「えっ。どうしたのよ?」
 母が驚いて言った。

「免許証忘れたんだよ」

 僕の言葉に、おやじと母が急げとジェスチャーをした。


「お父さん、健人に女性のお客さんなんてはじめて……」

「ああ、今日は記念日だ! 母さん、寿司でもとるか?」

「それにしても、綺麗で楽しいお嬢さんでしたね」

 母と父の会話が僕の部屋まで聞こえて来た。

 免許証と財布をポケットにしまい、僕は急いで階段を下りた。


「お前、あの子に惚れとるだろ?」

 父が走って玄関に向かっている僕に言った。


「何だよ、それ?」
 僕はオヤジを見ずに言った。


「俺も惚れた。お前が惚れない訳がない。頑張れよ!」

「大きなお世話だ!」

 僕は一言吐き、彼女の待つ車へ向かった。