朝、銀行の社員出入口を入ると、後ろから来た高木が悲鳴を上げた。

「海さん! 何付けて来たんですか?」

 高木が驚いた声を上げ、僕の鞄を指さした。

「ひぇ―。」

 僕が鞄を投げ出すと、鞄の中身が散らばった。


 鞄に『焼きししゃも』がぶら下がっていたのだ。

 恐る恐る『焼きししゃも』を拾うと、サンプルのキーホルダーだった。


 僕はすぐに彼女の仕業だとわかった。

 僕はおかしくなって笑った。いや、嬉しいのだ…… 

 僕は直ぐ彼女にメールを送った。


 僕『ししゃも、ごちそう様。朝から同僚の悲鳴に、鞄の中身ぶちまけてしまいました』

 彼女『うそ! 今気が付いたんですか? 素敵なキーホルダーでしょ。英会話のお礼です』
 
 僕『それは、それは、ご丁寧にすみせん。朝からおじさんのエネルギーは消費しました……』

 彼女『あらまあ、お仕事頑張って下さい。午後、手形一覧もらいに行きますので……』


 彼女とこんなメールを朝から出来るなんて、僕は夢にも思って居なかった。


 思わずメールを見てニヤニヤしてしまう僕を、気持ち悪い物を見るように神野が横目で通り過ぎて行った。