恋愛預金満期日 

 三時のシャッターが下りると、美也が飛んで来た。


「これ、海原さんと神谷さんに、って雨宮さんから……」

 美也は沖田建築の封筒を二つ出した。

 ひとつには神谷、一つは海原宛となっていた。


「グアムのお土産だって。私も、もらったから」
 美也がそれぞれに渡した。

「あ―。チョコだ」
 神谷が中身を見て言った。

「海原さんの中身は、何ですか?」

 美也に急かされ、僕は封筒を開いた。
 中には神谷と同じチョコレートの他に、グアムの文字がデザインされたハンカチが入っていた。
 『先日はありがとうございました。雨宮』と付箋があった。

 
「雨宮さん、融資の窓口で渡すのはまずいからって、通帳と書類の間に入れて来たのよ…… 良かったですね、海原さん」

「でも、なんで神谷までもらうんだ?」
 僕は軽く神谷を睨んだ。

「僕だってグアムの話したじゃないですか? 先輩だけに渡しづらかったんじゃないですか?」

「そっか。それで、このお土産ってどういう意味? 前向き? 後ろ向き?」
 僕は聞いた。

「まあ、悪い方には無いと思いますよ。直ぐにお礼なんて、いい人じゃないですか?」
 美也が答えた。

「大事なのは、先輩の気持ちですよ? 彼女からもらって、率直にどう感じたんですか?」

「嬉しかった……」
 僕は手にしたハンカチを見た。

「なら、それでいいじゃないですか? 先輩が嬉しいと思った気持ちが大事なんですよ。俺より、お土産多いんだし、良かったですね」

 神野の言葉に、僕は又、宝物が増えたと思った。

「そして、これからどうするか? ですね…… 雨宮さんこれで海原さんとの事はチャラと思っているでしょうからね」
 美也が言った。

「えっ。どういう事?」
 僕の頭に又、不安が過った。

「おごってもらって、お礼したら取りあえず一段落でしょ?」
 美也が当然の事のように言った。

「次にどう繋げるか?ですね…… 融資の窓口で口説くのもね? そうかと言って又偶然があるとは限らないし……」
 神野が腕を組んで考えている。


 確かにそうだ。次をどう誘えばいいんだろう?

「分かったわ! 私が何とかする!」
 美也が任せとけとばかりにガッツポーズをした。

「お前達、さっきから何をやっているんだ! 仕事は山のようにあるんだぞ!」
 課長の原田の声が響いた。

 僕達は慌てて、グアム土産を隠した。