恋愛預金満期日 

 次の日の昼、神谷と美也に手招きされた。
 僕は食事を乗せたトレーを手に、二人のテーブルに腰を下ろした。

「先輩、何かいい事ありました?」
 神谷が横目で僕を見る。

「なんだよ。河内産業の事か?」
 僕はしらばっくれた。

「それもですけど、他に何か隠していません?」
 神野が僕から目を逸らさず、伺っている。

「か、隠すって何を?」
 僕はしどろもどろになった。

「朝から、ニヤニヤしたり、急に仕事に集中したり気持ち悪いんですよ! 雨宮さんと何があったんですか?」
 神谷の声が激しくなる。

 僕の顔は赤くなり、夕べの経緯を二人に話した。


「へえ―。凄い進歩じゃないですか…… 先輩にしちゃ上出来ですね!」

「雨宮さんにしてみれば、何も聞かずに一緒に居てくれたのは嬉しかったんじゃないのかなぁ……」
 美也の言葉に、僕は大きな光りを見た。


「でも、鍋だって? 十歳も年下の女の子誘ったのに……」
 神野が笑いを堪えている。

「なんだよ! しょうがないだろう…… とっさに目に入ったんだから……」
 僕は剥れた。

「いいですよ、海原さんらしくて…… でも今日、雨宮さんがどう出るかですね?」

「どうって?」
 僕は聞き返した。

「例えば、甘い声でクネクネ次の誘いをおねだりして来たら、海原さんいい鴨にされていますね。女は怖いですよ。それか、何も無かったように無視されたら、迷惑だったって事ですよ」
 美也が腕を組んで肯いている。

「えっ。そんな…… じゃあ、前向きのパターンは?」

 僕の質問に二人は、同時に両手を上に向け、首を傾げた。


「おい! もう、お前らのアドバイスはいらん!」

 僕は怒って席を立った。

 二人が後ろで腹を抱えて笑っていた。