祭り当日も俺の心は盛り上がらなかった。

 女の子を見ても楽しくならない。それは、美夜が居ないからだと解っていた。


 祭りの最中も、俺は美夜を探したが見つからなかった。

 見かけたらなんて言えばいい?

『げんきだった?』それだけでいい。

 美夜の姿を一目みられるなら……


 祭りも終わり、散らかったままの境内へ向かった。
 三年前に美夜と別れた場所だ……


 境内の片隅に立ち美夜を探す俺の目の先に、走って息を切らしている美夜の姿が現れた。

 誰かを探しているのか? 今年は誰を探している?

 俺は美夜から目が離せなかった。


 美夜は俺を見つけると、ゆっくりと近づいてきた。

 もしかして、俺を探していたのか?


 美夜の俺を見つめる目に、三年間の想いが溢れ出て言葉を失った……


「嘘つきじゃなかったね……」

「俺は嘘つきじゃない」



「逢えて良かった……」

「俺も…… 逢えて良かった」


 たったそれだけの言葉に、すべての想いが伝わってきた。


 美夜は優しい笑みを見せると、ゆっくりと背を向け歩き出した。

 俺は込み上げる想いに、美夜の腕を掴もうと手を伸ばした。


 しかし、その手を掴んだのは小さな柔らかい手だった。


「パパ!」

 と息子が俺の手を引っ張った。


 俺は、美夜の背中を見つめた。



 秋恋神様ありがとう…… 美夜に逢わせてくれて……
 そして、俺を止めてくれて……

 
 俺はこれからも、秋祭りに参加する…… 
 でも、あの時の熱い祭りは二度と無いだろう……