良かったのか悪かったのか今回は獅子部に入り、煙火部の雅巳に会うのは祭り当日だけだった。


 三年前と同じように祭りは盛り上がりを見せていた。

 しかし、私の心にあの時のような興奮はなかった。雅巳が側に居ないからだ…… 
 私は何を期待していたのだろう? 

 三年間、私は雅巳を忘れる事が出来なかった……


 祭りが終わり花火の煙の臭いが残る中、私の足は煙火部のテントへと向かっていた。


 大丈夫、セリフはちゃんと考えている……

『お久しぶりです。お元気でしたか?』

 にこりとほほ笑んで大人になったと見てもらう。

 雅巳は私の事など忘れているだろう…… 


 今年もどこかの女の子と盛り上がったのかもしれない……


 煙火部のテントの前で、仁志が声を掛けてきた。

「あっ! 美夜ちゃん。雅巳がずっと美夜ちゃん探していたよ。境内の方に行ったんじゃない」

 私の胸は一気に高鳴り、仁志に頭を下げると境内へと走り出した。


 雅巳が覚えていてくれた…… 

 雅巳が探してくれていた…… それだけでいい…… 


 境内の隅に雅巳の姿を見つけた。雅巳はじっと私を見ていた。

 ゆっくりと歩みより、手の届かない距離で足が止まった。


 練習したセリフを言わなきゃ……
 しかし、言葉が出ない…… 

 三年前と変わらない気持ちが今も溢れていた。


 そして、じっと見つめる深い目に、私は三年前に感じた雅巳の気持ちが本物だと感じた。

「嘘つきじゃなかったね……」

「俺はう嘘つきじゃない……」


「逢えて良かった……」

「俺も…… 逢えて良かった……」


 その言葉だけですべての想いが伝わっていくようだった……


 私はもう一度ほほ笑むと、ゆっくりと雅巳に背を向け歩き出した。

 込み上げる思いに振り向き駆け寄ろうとした私の横を、小さな男の子が駆け抜けて行った。

「パパ!」


 私はそのまま振り向かず前へ歩き出した……


 私は付き合っている彼と別れる決心が着いた。もう、大丈夫。

 だって、雅巳の思いが私を強くしてくれたから……


 私は雅巳に忘れられない恋をした……


 秋恋神様ありがとう…… 雅巳に会わせてくれて……
 そして、私を振り向かせないでくれて……


 私はもう二度と、秋恋祭りには参加しない……

 だって、もうあの時の熱い想いは二度とないから……