「この前、その女の子を助けてね。
その時にどうやら好意を持ってくれたみたいで、少しづつでも知ってもらえると嬉しいって言われたんだ」
……先輩、あいかわらずの優しさです。
「それでその子がだいぶぐいぐいくる子で、俺もちょっとびっくり。
お昼ご飯食べましょうとか、一緒に帰りましょう、とかね」
先輩は誰もが認める紳士さだから、
きっと断らないんだろう……。
笑顔で承諾する先輩の映像が頭の中に流れた。
「それだけだよ」
「そうだったんですね。
割とウワサになってましたよ」
「うーん、それはまずいね。
ウワサにするのが策略だったかもだし」
さっきから二人の話を聞いてるだけの私に、先輩がニコッと笑いかけた。
「心配になったんだ?」
「え、いや、あのっ」
「あはは、冗談だよ」
「もう、先輩……!」
でも、嫌なドキドキが完全に取れた。
だけれど、要するにその女の先輩は……
ライバルってこと、だよね。
「手強そうなライバルだな」
私の考えてることが分かったのか、龍弥くんがそう言った。
本当にその通りだと思います。
「菜奈は菜奈だからな」
「え?」
「どうせ、あの先輩みたいに綺麗になろうだとか思ってんじゃねーの?」
「うっ……」
図星すぎて返す言葉もございません……。