「普段から1人で?」



「うーん、大体は1人です。
夜遅くに帰ってきて、朝早くに出ちゃうんで
実は数ヶ月くらい顔見てません」



えへへって笑っても、先輩は笑ってなくて、
どうしたんだろうって先輩?って呼んでも、
先輩は真っ直ぐ私の家を見ているだけだった。



「……寂しくない?」



「……慣れっこです。
小学生の時から、1人でしたから!」



小学生の頃はすごく寂しくて、毎日泣いて。
暗くて怖い夜もテレビをつけて
面白い番組を見て笑って……。

ベッドに潜ればお父さんとお母さんからもらったぬいぐるみをぎゅうっと強く抱きしめて眠ってた。



今もそのくせは抜けてないけれど、
何年もこの生活をすれば慣れてしまった。



「もっと早く、知ってればよかったね」



「え?」



「そしたらもっと早く連絡先交換したのに」



真剣な表情の先輩に何もいえずにいると、
先輩はそのまま、私の頭を優しくぽんぽんしてくれた。



「寂しくなったらいつでもおいで。
いつでも電話していいよ」



「先輩……?」



「たまには頑張らなくてもいい場所、
作っておくんだよ?」



先輩はそう言って、また明日、って言った。



それでも私が中に入るまでは外にいてくれるらしくて、
ドアを開けて中に入り、少し顔を出せば
先輩は笑顔で手を振って来た道を引き返した。



……またね、です、先輩。