「あの時、告白の返事、したんです。
お断りして……」



「え……」



「ちゃんと、話したかったのに……っ、
爽太くん、電話出てくれない、しっ」



「……菜奈」



やっと、菜奈って呼んでくれた。

爽太くんがそう呼んだからか、周りの人たちは私たちが付き合ってることを理解した、みたい。



「学校で会っても……避けられるしっ!」



今だって、こんな大勢の前ですごく恥ずかしいし、何してんのって思うし……!



「だから、だから……こうするしか、ちゃんと話せる方法思いつかなかったんです……」



ぶわっと涙が溢れた。



爽太くんの表情はぼやけて見えない。

周りの人たちも何もしゃべらなくなって、
その場がしんとしてる。



私はぐっと手を握って、俯いた。



「……飯塚さん、だっけ?」



「はい……」



「ごめんね、気持ちは嬉しいんだけど、俺彼女いるんだ。
隠してて、ごめん」



「……分かりました。
私のほうこそ、話も聞かずに迫ってすみませんでした……」



ぱたぱたと小走りで足音が遠ざかっていくのが聞こえた。



未だにしんとしている。