「……真白さん、続けて」
「え?」
「さっき言おうとしてたこと。
なんとなくだけど、雰囲気では分かってた。
でもちゃんと、言葉で聞かせて?」
どこか寂し気な表情の矢島くんは、そういって笑った。
「……あの、やっぱり私は……爽太くんが好きだから……。
矢島くんとはお友達のままでいたい、です」
「……うん、ちゃんと言ってくれてありがとう。
すぐ諦められるかわからないけれど、もう邪魔はしないからさ。
……あと、ごめんね、俺のせいで」
首を横にぶんぶん振れば、矢島くんはおかしそうに笑いだした。
「……その先輩が何か言いたそうだから、俺、帰るね。
これ、お会計の分」
またね、そういって矢島くんは手を振りながらお店を後にした。
さっきまで矢島くんがいた席に、陣先輩が座る。
「大体内容は理解した。
で、菜奈の反省する点は?」
「……爽太くんに言わなかったこと、です」
「そうだよな。それはちゃんと謝ろうな」
陣先輩はそれ以上は何も言わずに、
でもずっとそばにいてくれた。
私がなく資格なんてないのに、
気を抜いたら涙が出てきそうだった。
「……陣先輩」
「ん?」
「私、嫌われちゃいました、よね」
「んなことねーだろ。大丈夫だって。
あいつ最近切羽詰めすぎだから外に無理やり出させたんだよ。
……でも、だからこそ話せなかったって気持ちも、理解はしてるから」
……陣先輩、どこまで優しいんですか。


