「一応聞くけど、王子に言ったの?」
その言葉に首を横に振れば、由良ちゃんはやっぱり……とため息をついた。
だって、爽太くんは受験勉強で忙しいのに、そんなこといえるはずもないんだもん。
言ったほうがいいことも分かってる。
……でも、負担になりたくない。
面倒だと思われたくない。
そんなことばっかり考えてた。
『真白さんには悪いけれど、デートに誘わせてね』
数日前のお昼に由良ちゃんが顧問の先生の所に行ってる間に、矢島くんが由良ちゃんの座ってた席に来てそう言った。
言葉の意味があんまり理解できなくて、びっくりしちゃって。
……映画館のチケットをいつの間にか握らされてた。
しかも、ちゃんと部活がオフの日に。


