【 爽太side 】
「爽太、あの男と菜奈、一緒に周らせていいのか?」
裏方のほうで注文と注文してくれた人の確認をしていたら、陣に声をかけられた。
「うーん、本当は嫌だけど……。
隠していたことは申し訳ないし、これでチャラってことにしてるよ」
「心広いな。俺だったら邪魔してるわ」
したい気満々だって。そりゃあ。
でもさ、付き合ってることを秘密にするってことは、割と他人に失礼になっちゃうときがあるっていうのは分かってた。
「菜奈からね、電話が来たんだ。
矢島くんにちゃんと話がしたいって」
菜奈だってちゃんと向き合おうとしてる。
それを邪魔するなんて、ちょっと無理だ。
それがたとえ、今の状況を作り出しても。
「それに、明日なら一緒に周れるしね」
「前の爽太じゃ考えられないな。
菜奈の存在は前から知ってたけど、マネージャーの仕事もしっかりできるし、いい彼女もったな」
「バスケ部のマネージャーってところはちょっといただけないかな」
陣がふっと笑って注文されたものを運んで行った。
俺もそれに続いて運ぶ。
2人仲良く話してるところを見るのは、正直な話、結構しんどい。
それでもたまに感じる菜奈からの視線が、なんだか俺を安心させてくれた。