「でもね、矢島くん。
俺は好きな子を簡単に手放すほど、軽くはないんだ」
「わかってますよ、それくらい。
特定の女を作らなかった先輩が本気になった時ほど強敵なものはないっす。
だから俺は……言いに来ました」
私のことなんて見えてないんじゃ?ってくらいに話が進んでる。
2人とも、後ろに龍弥くんと先輩がいること気づいてるのかな?
「本当に無理だと、諦めるしかないんだと、諦めがつくまで。
俺は菜奈にアピールし続けますよ」
……え、今、矢島くん……菜奈って……。
「なるほどね。……本気なのは伝わったよ。
……簡単に菜奈を渡すつもり一切はないから」
そういって爽太くんは席を立った。
そしてその席に、龍弥くんが座った。
「……菜奈、悪いな、つい言っちゃって」
「ううん、言おうと思ってたことだから。
矢島くんも、ちゃんと言わなくてごめんなさい……」
「いいんだ。いろいろ俺も急なことばかりしちゃってるしね」
そういって笑った矢島くんはいつも通りだった。


