「何してるのよ」



龍弥くんとぜぇぜぇしながら教室に入ったおかげで、既に教室にいた由良ちゃんに理由を聞かれた。

朝の一連のことを話して言われた言葉が、冒頭の言葉だった。



「普通に考えてありえないに決まってるでしょ?」



「うっ……」



「ったく、頼むから一ノ瀬先輩のこと下で呼んでくれ……」



何が嫌なの?という由良ちゃんの言葉に、嫌じゃないよ!と即答した。



「恥ずかしいんだもん……」



「菜奈らしいけど……それは王子が可哀想よ」



確かに、先輩はずっと菜奈ちゃんって呼んでくれてた。



「り、龍弥くんだって!一ノ瀬先輩って呼んでるじゃん!」



「おー、じゃあ俺が爽太先輩って呼べばいいんだな、わかった」



「え、や、あの……」



「爽太先輩ってよべよ?」



……龍弥くんの目が、ぎらっと光った気がした。