「いやいやいや!仮にも彼氏なのに下の名前で呼ばないの!?」
「錦戸……俺それ割と気にしてたんだから掘り返さないでくれないかな」
ええ!?そ、そうだったんですか……!?
そんな素振りないから全然気づかなかった……。
「あいつ逃げたな」
一ノ瀬先輩の視線の先には、もうだいぶ前を歩く龍弥くん。
龍弥くんの慌てた表情の原因は……そういう事だったんだ。
でも、でもでも……!
「菜奈ちゃん、一ノ瀬のこと下の名前で……」
「龍弥くん待ってぇー!!」
私もその場から逃げるように、龍弥くんの元へ向かった。
龍弥くんはギョッとして、早歩きになる。
終いには走って、遅刻でもないのに2人して学校まで走ってしまった。


