「話す時間、もらえる?」
少しの沈黙の後、先輩がそう言ったので、頷いてから家に招き入れた。
リビングに通して、テーブルに向かい合って座る。
「さっきも言ったけど、俺は君が好きだよ。
真っ直ぐに、純粋に気持ちを伝えてくる素直さ。その汚れのない笑顔……全部好き」
「先輩……」
「好きだからこそ、俺のせいで汚したくもないし、辛い思いをさせたくないんだ」
辛い、思い……?
「俺と付き合った子は別れる時に必ずこう言うんだ。“出会わなければよかった”ってね」
なにそれ……。
なんでそんなことを……。
「理由は教えてもらえなかったけど、たぶん……周りの目が原因なんだと思う」
「周りの目ですか……?」
「錦戸から聞いた話だけど、俺の元カノたちは俺の横に立てるようにっていろんな努力をしてくれてたみたいなんだ。
……周りの目を気にして」
あ、そっか。
先輩はそのつもりがなくても人の目を引くんだ。
通る人みんなに見られるくらいの人なんだ。
周りの人がその隣の人を見て、彼女だと分かったとき……。
どんな言葉をかけるんだろう。
元カノさんたちは、どんな言葉をかけられてきたんだろう。


