2人で公園に向かう。

「あははっ。」

人の話声、笑い声。

お願い、やめて。

すれ違う人達がどうにも気になる。

別に私を見てるわけじゃないんだろうけどさ。

自意識過剰ってやつね。

私は先生を盾に隠れるように後ろから下を向いて歩いた。

どうしても、前を向いて歩けない。

怖い…

「着いたよ。」

そう言われ、初めて前を見る。

目線の先には満開の桜。

思わず、目を見開く。

「本当だ。綺麗に咲いてる。」

無意識にそう呟いていた。

「よかった。少しでも笑った顔が見れて。」

私を見て嬉しそうに微笑む先生。

私、笑ってたの?

私は思わず、プイっとそっぽを向いた。

なんか心許したみたいで嫌…

でも、久しぶりに笑ったかも…

桜とかね、見るの好き。

季節特有のものがね、結構好きなの。

でもね…

「季歩さんは、桜好き?」

風が吹き、髪が靡く。

「うん、好き。」

でもね、私にもいろいろあるのよ…

桜の花びらがひらひらと1枚落ちていく。

「それじゃあね、季歩。」

あのなんともいえない、優しく儚い悲しそうな声がリフレインする。

「嫌…」

頭を抱え、その場に座り込む。

「季歩さん?」

揺れるスカート、靡く髪の毛。

嫌…

「ハァハァハァハァ…」

過呼吸を起こす、私。

「季歩さん、大丈夫?ゆっくり息吸って?」

背中をさすってくれる先生。

「大、丈夫、だから…」

酸素が…足りない。

必死に息を吸う。

「大丈夫じゃないだろ?さっきから無理やり笑ったり、平気なふりしたり。」

悲しそうな表情が一瞬見えた。

少し胸ズキッともしたが…

でも、でも。

先生に…何が分かるのよ。

いい子のふりして、無理やり笑って、自分を守ってるのに。