「昴、帰ろう」
私はいつものように昴のクラスへと足を運ぶ。
「おう。美々は?」
「今日は部活よ。結局バレー部にしたらしいわ」
「…ふーん、そっか」
私たちは二人で教室を出て、下駄箱へむかう。
廊下ですれ違うのは数組のカップル。
お揃いのストラップをして、腕を組んでいる。
「昴は部活何入るの?やっぱり柔道?」
「うーん…たぶんそうだな。でもまだ迷ってる。寧々は?」
「私は部活よりも生徒会に入りたいわ」
「やっぱりな。寧々ならそう言うと思った」
「小学校のときからそうだもの」
昔から私は委員長のような責任のある仕事を任されることが多く、自分自身もやりがいを感じている。
人に頼られるのはとても嬉しい。
長女だからかな。
校舎を出て体育館の前を通りかかったとき、ボールが壁にぶつかる音やかけ声が聞こえてくる。
バレー部だった。
「ちょっと体育館覗いてみようぜ」
「そうね。美々がいるかもしれないし」
入り口から覗いてみると、ボールをネットの向こう側へ飛ばす練習をしているようだ。
「あそこにいるわ美々」
私たちと反対の位置であるネットの向こう側に、美々と何人かが飛んでくるボールを追いかけて拾っている。
「ボール拾ってるわね」
「入部したばっかりなんだから、いきなり練習はさせてもらえないだろ」
「運動部って厳しいのね」
「まあな」