たまに違和感を感じることはあったけれど、彼女との逢瀬は続いていた。
仕事終わりに彼女の部屋へ通い、夜ご飯を作ってもらってはベッドで甘い時間を過ごす。
今までと変わらない日々。
彼女への想いも変わらなかった。
しかしある日、その時は訪れた。
俺はいつものように仕事終わりに彼女の部屋へと足をむけた。
「お疲れ様」
いつものように彼女は笑顔で迎え入れてくれた。
俺は鞄と上着を彼女に手渡して、彼女を引き寄せる。
「未羽もお疲れ様」
そう言って俺は彼女の額にキスをする。
「今日はカレー作ったよ。すぐ食べるよね?」
「うん、ありがとう」
今日はカレーか。
ソファに座って、テレビのチャンネルをまわす。
今日はいまいちいい番組がないな。
まあこれでいいか。
「……圭介さん」
うっすらだが彼女が俺の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「ん?」
俺は彼女の声に応える。
「…愛してる」
珍しいな、彼女のほうから言ってくれるなんて。
「俺もだよ。いきなりどうしたの?」
俺は少し不思議に感じて彼女を見る。
彼女は手に何かを握りしめていた。
「本当に愛してる?」
「うん。未羽のこと愛してるよ」
「奥さんよりも?」
これが彼女がいままで一緒にいて初めて妻のことを口にした瞬間だった。
「どうしたんだよ、いきなり」
突然の発言に俺は戸惑う。
一気に現実に引き戻された気がした。
「奥さんよりも…子供よりも愛してるって思うなら、もう一度”愛してる”って言って」
泣きそうな声で彼女は言った。
その瞬間わかった。
俺が彼女に対してどれだけ残酷なことをしていたか。
でも彼女との関係を終わらせたくなくて、俺は現実から目を逸らす。
「…未羽は今日疲れてるんだな。こっちにきて一緒に休もう」
「誤魔化さないで。私は真剣に聞いているの」
「…」



