彼は東圭介(あずまけいすけ)。
同じ会社の同じ部署で、営業課に所属している。
彼は入社9年目の31歳、私は入社2年目の24歳で、直属の上司だ。

厳しさのなかに優しさを持ち合わせ、後輩には尊敬され、上司には信頼される誰もが憧れる人である。
爽やかな印象を受け対応も上手なため、営業先には好評である。

憧れる女性も多いが…既婚者である。
奥さんのことを大切に思う、愛妻家。
彼の会社でのイメージだ。

私はずっと、彼が好きだった。
私が困っているとき、悩んでいるときはいち早く気づき、声をかけてくれた彼。
そんな彼に惹かれるのは、必然だったのかもしれない。

そんな彼と私は、3ヶ月前から不倫をしている。
何でそうなったかは、わからない。
気づいたら唇が重なっていて、私は彼の腕の中にいた。
私は迷わず、彼を受け入れた。

何であのときキスしたの?

私はずっと、聞けないでいる。
深く入り込んではいけないって、わかっているから。