そんなことを考えているうちに、気づけば彼氏の浮気のことなんてどうでも良くなり、私は雨の音の虜になっていた。
雨には心を落ち着ける効果があるのだろうか。

「いい顔になりましたね」

目を開けると、彼は私を見て笑っていた。

「雨の音、素敵でしょ?」

そう問いかけられ、私は答える。

「そうかもしれないですね」

彼につられて、私も自然に笑っていた。
それから彼と少し話をして、気づけば雨はあがっていた。

「雨、あがっちゃいましたね」

彼は少し残念そうに言う。

「でもあれ、見てください」

私は目線の先、彼の向こう側を指さす。

「あ…」

彼が振り向くと、その先には7色のアーチ…美しく鮮やかな虹がかかっていた。

「こんなにはっきりとした綺麗な虹、初めて見ました」

「私もです。虹って、こんなにも綺麗なものだったんですね」

虹なんて子供の頃に見た以来で、大人になってから目の当たりにするのは初めてだった。
今まで生きてきた中で一番美しいとさえ感じ、涙がたまり溢れそうになってこらえる。

「一緒に見た相手が、あなたで良かった」

彼がそう言った。
虹をバックにした彼の笑顔はとても眩しく、素敵だと思った。

「私もです」

私は純粋に心からそう思った。