ーーーーピンポーン

私は彼の玄関のチャイムを鳴らす。

「はい」

扉が開いたあと、彼は驚いた表情をした。

「こんばんは」

久しぶりに姿を見た三枝さんは、少し痩せたようだった。

「カレー作りすぎたんで食べません?どうせまともな食事してないんでしょ?お邪魔しまーす」

私はカレー鍋を持ったまま、ずかずかと部屋に上がる。

「どうしたんですか。松岡さんから訪ねてくるなんて」

「…うん?ああ、三枝さんにご報告がありまして」

私はカレー鍋をキッチンに置いて、振り向く。

「この度、私は圭介さんと別れました~」

そう言うと彼はさらに驚いた表情をした。

「え、なんで…」

「奥さんと別れる見込みがないなって思って」

私はにこっと笑う。

「だから私から振ってやったんですよ!」

「無理して、笑わなくていいですよ」

彼は真剣な表情でそういった。

「辛かったですよね。今までずっと。松岡さんが彼のこと深く愛してたの知ってますから。泣いていいんですよ」

気づいたら私は涙が溢れて止まらなくなっていた。

「三枝さんがいきなり優しいこと言うから、止まらなくなっちゃったじゃないですか!我慢してたのに…」

「我慢しなくていいじゃないですか。今日はとことん泣きましょうよ。お酒もありますから飲んで、話だったらいくらでも聞きますよ」

優しさが身にしみる。
今日、三枝さんがいて良かった。