「あ…」

その男性は、あの雨宿りの彼だった。
まさか同じ会社だったなんて。

「あのときの方…ですよね」

私は彼に訊ねる。

「また、会えましたね」

彼はあのときと同じ笑顔で笑った。

「あの…お名前教えていただけませんか」

また会えたら必ず聞こう。
そう思っていたから。

すると彼は笑って言った。

「吉岡晴人(よしおかはると)。あなたは?」

「水崎真輝(みずさきまき)です」

「また会えて嬉しいです。水崎さん」

ああ。
本当に彼は晴れた日の太陽のようだ。
彼の笑顔は私を照らしてくれるような気がした。

「お昼休憩から帰ってきたところですか」

「いいえ。ご飯を食べに行こうと思ったら傘を忘れてしまって」

彼の言い分に私は思わず笑ってしまった。
私と同じだ。

「もしかして、水崎さんもですか?」

「はい」

私がそう答えると、私たちは顔を見合わせて笑った。

「でももしかしたら、要らないかもしれないですよ。傘」

「え?」

エレベーターが11階で止まり、扉が開く。
すると彼は窓を指差す。

「ほら」