そして季節は巡り、彼女たちは卒業式をむかえた。
卒業式のあと柏木美々さんと八木昴くんがそろって挨拶に来た。
二人とも幸せそうな表情をしていて、それだけで十分だと思った。
柏木寧々さんは宣言通り、あれから1度も保健室には来ていない。
本当強情な子だ。
桜が満開になり、入学式をむかえる。
また今年も新入生がはいってくる。
この学校に来て、もう何度目の春だったか。
僕はまだ保健医をしている。
今日もまた仕事だ。
僕は学校の最寄駅で電車を降り、階段を降りる。
まだ生徒はほとんどみえない。
「きゃっ…!」
階段を上ってきたスーツの女性にぶつかってしまい、彼女は定期入れを落としてしまった。
僕はそれを拾い、彼女に手渡す。
「ごめんなさい。これ…」
彼女の顔を見たとき、僕は驚いた。
まさか…また会えるだなんて。
「す…ぐる…くん?」
彼女もまた僕を覚えていてくれた。
それだけで十分だった。
「翔子…」
このとき初めて運命というものを信じても良い。
そう思った。