もう一度、あなたに恋していいですか

「寧々ちゃんと昴ね、ほんっと仲良くてベッタリで…」

彼女は保健室に来るたび、その話をする。
彼女は柏木寧々さんと八木昴くんが両想いだと思っているようだった。

「柏木美々さんも八木昴くんにもっとアピールしないといけないですね」

「アピールって言ったって、寧々ちゃんは運動音痴なこと以外完璧で太刀打ちできないですもん。運動ができたって、料理や勉強ができることよりも劣るし」

「だからお姉さんに八木昴くんをとられてもいいと?」

「昴なら必ず寧々ちゃんのこと大切にしてくれます。私はいいんです…私は…」

彼女はお姉さんを尊敬する一方、コンプレックスを抱いている。
どこかお姉さんには遠慮がちで、自分のことを後回しにする。
ずっと比べられてきたんだろう。

「でも八木昴くんを諦めきれていないのでしょう」

「…はい。どうしたらいいんでしょうね」

彼女が苦しそうな顔をすると、僕の心がざわつく。
何故だろうか。

「こんなこと友達の玲奈にも話してないんですから、秘密ですよ?」

「ふふ…わかってますよ」

今まで誰にも話していなかった気持ちを僕に打ち明けてくれた彼女に、心を許している僕がいた。

こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。
ふと気がついたら、放課後を待ちわびて時計を見る回数が増えていた。
今日も僕は彼女用のマグカップを机の上に準備をしている。
そんな自分に驚いていた。

今日も彼女はやって来て珈琲を飲んでいた。
一時間弱話したあと、ふと扉のほうに目をやると誰かが覗いていた。
慌てて姿を隠していたけれど、彼女の姉・柏木寧々さんだろう。