ドンドンドン
「有誠さん、洸遥です。編入生の高崎を連れて来ました。」
「入れー」
どでかい扉の向こうから返事があって、洸ちゃんが扉を開けた。

中に居たのは、20代くらいの若い男の人。
「高崎君、初めまして。そして誠久学園高等部へようこそ。理事長の佐久永有誠です。」
「は、初めまして。高崎愁也です。今回は本当にありがとうございます。」
「いえいえ、さあ、堅苦しい挨拶はここまでにしよう。
……おい洸遥。お前この子のことは?」
「……俺の従姉妹だって分かってて入れたんでしょ。大体の事情は把握しました。勿論青にも言いません。」
理事長さんの問いかけに洸ちゃんがこう答えると、
「おう、それでいい。」
と理事長さんが言った。
その次に理事長さんは私の方を向いて、
「高崎君改め姫咲愛華ちゃん。この学校では理事長の俺が1番偉い。でも、生徒の人望は生徒会が1番集めてる。君が音龍だってことは君のお母さんから聞いてるけど、大亜門渡のメンバーと交友を深めることは、君の安全に繋がる。君が彼らを信頼できたらでいい。仲良くして欲しい。」
と言ってきた。どういう意味だ? と思ったら洸ちゃんが、
「俺が生徒会で庶務してんのは言ったろ?で、もう1人の庶務も幹部、書記は副総長、そして生徒会長はうちの総長なんだよ。俺らと仲良くするってのが学園の中で1番安全だ。…まあ多少の面倒はあるだろうけどな。」
と解説を入れてくれた。

「まあ、困ったことがあれば洸遥にここに連れてきてもらうといい。ここまで来るには生徒会か風紀のカードキーが必要だから。そしてこれが、君のカードキーだ。寮の鍵であると同時に学生証でもあるから、失くさないように。」
理事長さんがそう言いながら私に1枚のICカードを渡してくれた。
「はい。ありがとうございます、理事長さん。」
お礼を言うと、理事長さんは笑って、
「有誠でいいよ。洸遥たちも名前呼びだし。俺も名前で呼ばせてもらうから。」
と言ってくれたので、
「はい! 有誠さん。これからよろしくお願いします。」
と言うと、
「よし! がんばれよ、愛華。」
と頭に手を置いて目を合わせてくれた。

「そろそろ職員室に行ってくれ。」

という有誠さんの言葉で、私と洸ちゃんは理事長室を後にして、職員室に向かう。

「ねぇ、有誠さんは生徒と名前で呼び合うの?」
道すがら聞くと、洸ちゃんは
「全員とは無理だろ、ふつーに。うちの学園、初等部から大学まであんだぞ。大亜門渡と百龍のメンバーだけだ。今は高等部には百龍いねぇけど。」
と教えてくれた。…ってことは前はいたんだ。

職員室につくと、洸ちゃんが
「此処で待ってろ。多分お前大声出すから。堪えろよ。」
という謎の言葉を残して1人で入ってしまった。
少し待っていると、扉が開いて洸ちゃんとスーツの男の人が…って

「貴にい!?」

先々代の百龍幹部だった貴にいこと小塚貴仁がにっと笑っている。
「久しぶりだなぁ、愛華…じゃねぇや、愁也。俺が担任だからな、安心しろよ。」

いや、ね、大変嬉しい言葉なのだけど、全く安心できない。というのも、
「貴にいホストじゃなかったの?」

貴にいは見た目完全ホストで、ぶっちゃけずっとホストだと思ってた。いや、私が入った時には貴にいの代じゃなくなってたしね。たまに顔だしてくれるから知ってるけど、何してる人かなんて知らなかった。

「だーれがホストだ。ってかホストだと思ってたのかよ。」
貴にいは苦笑しながらそう言って、
「よし、そろそろ教室向かうか。あi…愁也は洸遥と同じS組だからな。」
教室に向けて歩き出した。