「じゃあ、頑張ってね。」
「困ったら周りの人に頼るんだぞ。」

車で1時間ちょっと、郊外の山の上にある私立誠久学園についた。
「うん! いってきます!!」

さて、学園は…って!
「門でか……何これ………」
万全のセキュリティってパンフレットにあったけど…万全すぎじゃない?遅刻用の門とか無いの?あっ、ここ敷地内に寮があるんだった…えっ、これどうしたらいいの…?
あたふたしていると、門の向こうから誰かが来た。

「編入生の高崎君ですか?」
「はい。」

……うん?何か見たことある顔だぞ………って!

「洸ちゃん?!」
どう見ても従兄弟の洸ちゃんこと門脇洸遥です。ありがとうございます。……なんだこれ。

「………その声、もしかして愛華?」
やっぱりーー!

「なんで洸ちゃんがこんな所に居るの?!」
「どう考えてもこっちの台詞だろ!何で編入生が愛華なんだよ!」
そりゃそうだ。従姉妹が男子校に来るとか、絶対洸ちゃんの方がびっくりだよね。
事情を軽ーく説明すると、洸ちゃんは、
「OK、なんとなく理解した。だから今日から同室者ができるとか言われたんだな。」
と言った。

……?
「え、同室者?」
って寮のはなしだよね?
「あー、ちょっと前理事長に言われたんだよ。もうすぐ編入生が来るけどお前の同室者になるからって。」
配慮ってもしかして1人部屋じゃなくて従兄弟と同室ってことだったの? ちょっと予想外すぎる。

洸ちゃんが理事長室に連れてってから職員室まで案内してくれる係だそうなので、大人しくついて行く。
従兄弟と言っても夏休みくらいしか会うことがないので、話のたねは尽きない。お互いの所属している族の話になると、
「あ、そうだ。愛華…じゃない、愁也。お前気をつけろよ。うちの学校、俺が入ってる大亜門渡の奴多いから。」
と言われた。

洸ちゃんが入ってる大亜門渡は、国内じゃ百龍と1、2を争う強さを誇る。でも初代の頃はそこそこ交流があって、今も交流は殆どないながら対立関係にはなっていない。でも、大亜門渡ばっかりの所に私こと百龍の総長っていう構図は、あまりよろしくないだろう。

「わかった。…洸ちゃん、私…じゃない、僕が音龍だっていうのは…」
「言わねーよ。お前が言うまでは。…てかお前一人称僕なのか。」
だめかな? 大人しい感じの方が悪目立ちしないかなーって思ったんだけど…

「おかしい?」
「いや、違和感はねぇけど…。虚勢は張れるだけ張っといて損はしねぇぞ。俺って言えるならそっちのがいい。」
あー、舐められないようにってことか。それならば、と、
「わかった。俺って言う。ありがと、洸ちゃん。」
と言うと、洸ちゃんは軽く頷いてくれた。

「そういえば、俺と従兄弟ってのは訊かれたら答えた方がいい。互いに母さん似だし、何となく似てるし。使えるネームバリューは使っとけ。」
ネームバリューって…洸ちゃんの名前そんな凄いの? と思ってると、
「言っとくけどな、俺これでもこの春大亜門渡の幹部になったし学園でも生徒会庶務になってんだからな。そこそこすげぇんだぞ。」
とドヤ顔で言って、

「ほれ、ここだ。」

ひとつの部屋の前で止まった。