『この事故により市内勤務の会社員、片瀬桐人さん(21)が搬送先の病院で亡くなりました』


そこまで聞いて、私は自分の耳を疑った。


カタセ、キリト。


私の手の中で握り締められたスマートフォンが振動する。



20:24
桐人「加奈子 どこにいる?」



メッセージを確認して、私は力の限りスマートフォンをコンクリート製の地面に叩きつけた。



ハッと我に返って顔を上げれば、私が待っていたバスは目の前に来ている。

私は投げ捨てたスマートフォンに視線をやることなく、逃げるようにしてバスへと乗り込んだ。