ピ ピ ピ ピ


一定の機械音


あたしの右手には懐かしい温もり


それが心地よくて


いつまでも眠っていたかった


ここが天国じゃない事ぐらい
わかってる


当然、病院なわけで


だから、もう少しの間
目を瞑って


ここに至るまでの事を思い出していた







あたし、てっきり死ぬのかと思ってた


あれは死神じゃなかったんだ




それとも、死神は私が死ぬのを


見逃してくれたのだろうか




なんてね







「沙良、もういいだろ?
そろそろ目を開けたらどうだ?」



あら、気づいてたの?


…………………………………………

……………………

『お兄ちゃん』




「はっ、お前がお兄ちゃん
とはね、、、普段から言わねえくせに…
………どうした?頭殴られて
狂っちまったか?」



ほんと変わらないわね


3年ぶりの再会で妹がこんな状態
だっていうのに



この憎まれ口



『元から狂ってる人には
言われたくないわよ朔弥』




お互いこうやって
憎まれ口叩いているのに


繋がれた手を離そうとしないのは



お互いが唯一の存在だから



幼い時に
両親を亡くし


親戚の家をたらい回しにされ
疫病神 呼ばわりされた


終いには施設に入れられ
常に私たちは孤独だった



この状態で、いったい誰を信じ

誰に助けを求めればよかったの?


そんな時でもいつだって


そばにいたのが


朔弥だった



朔弥にとっても私だけだった




ねえ、朔弥



覚えてる?




あの時した約束を


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ーーーーーーーーー


ーーー“死ぬときは2人一緒……”ーー






『…朔弥
ごめん…ごめんね………
…あの時の約束わ忘れてた…』



1人にしない


かけがえのない存在の筈なのに




たった3年されど3年


会えないだけで、こんなにも



弱く惨めになってしまうなんて…



「…そうだな、俺をおいて
先に逝くなんざ許さない……
俺は、、、一度たりとも約束を
忘れたことはない………ただ…
3年もの間、お前を1人にした俺を
お前は許すな!」


馬鹿

バカ

ばか


ほんとばか


『ばか朔弥』



寂しかった


淋しかった


何で1人になんかするのよ………


おかげで3年間我慢した涙が


止まらないじゃないの…



こんな弱い私を見せたくないのに



何で、優しく抱きしめたりするのよ



いつもみたいに悪口でも何でも


言えばいいじゃない



どうして、あんたまで泣くのよ…



なんでよ………



どうしてよ…………………っ




『…逢いたかったっ』













やっぱり今日も負けた



今日ぐらい朔弥に言わせたかった



“逢いたかった”って……………………