三次元なんか興味ない!

バタッ……。


向こう側から、何かが床にぶつかるような、落ちるような激しい音がした。

私の脳内に悪寒が走る。

仕方なく、状況を確認するため、布団を剥いで、立ち上がる。

足は若干震えるものの、勇気を出して、一歩ずつ踏み出す。

そして、思い切って、カーテンの隙間からチラッと覗いた。





私が目にした光景は、唯木瞬と思われる男子生徒が、床で頭を抱えて、うずくまっている姿だった。


わ、私に、どうしろと?

何かの試練?罠?嫌がらせ?


恐怖丸出しの疑問だけが頭をよぎる。

さすがに無視するのは、人としてダメすぎると思った私は、彼と一定の距離を保ちつつ、棚に置いてある熱冷ましのシートを一枚手に取った。





これから……どう、渡そう……。

目…………合わせるのは無理。

手…………渡しなんてできるわけない。

声…………かけるのは一番不可能。

…………あ!


私はふと、思いついた。

彼が気づく前に、手前の床にシートを置いて、すぐに立ち去ればいい。

目の前に置いたのに、話しかけてこないということは、話すのが苦手、ということぐらい相手も察するはずだ。

相手の理解力を、根拠もなく信じているが、今は、そうすることしかできない。





かたく決心すると、そろりと一歩前に出る私。


「ぅぅ〜……」


彼の、痛みを堪えているのがよくわかるうなり声にビビって、少々足がすくむ。

まだ、私に気づいていないようだが、息を吐いただけで気付かれるかもしれないと思うと、深呼吸することもできない。

緊張感漂うこの空気が、私の恐怖をさらに煽る。


なんで私がこんなこと……。

それに、下田の奴、遅い。

シートぐらい、渡したり、場所を教えといたり、しといてよ!

KY!

空気じゃなくて、人の気持ちが読めない奴!

っ…………私も、読めないけど……。

じゃなくて!

冷静になんないと、この高レベルについていけなくなるじゃんか……。