三次元なんか興味ない!

「じゃあ、一時間だけ、体を休めて様子を見ようか」

「あ、はい。ありがとうございます」


私はとりあえず、気づかれないように、静かに布団を被ろうとする。

だが、下田の一声で、瞬間的に私の動きはストップした。


「唯木君はそこの隣のベッドに横になってね。あ、隣のベッドは覗いちゃダメだよ。僕はちょっと職員室に用があるから」

ガラッ……。


下田がドアを開け、廊下側に響く足音。

その後、再びドアが閉まる音がすると、保健室は静かになった。





あんの、アホ下田!

そんなこと言ったら、相手がこっちのことを気にするかもしれないじゃない!

誰かもわからない奴が隣のベッドなだけでもイヤだっていうのに……。


シャッ……。


っ!?

隣か……。


隣のカーテンが開いただけで、もうビクビク。

手の震えが止まらない。

自分の臆病さが身に染みる。

私はすぐに布団をかぶって、さらに自分に蓋をするように身を隠した。


アニメ見るのに、こんなに時間かかるとは思わなかった……。

これも全部下田のせい。


人のせいにする余裕はあるものの、恐怖で体温が下がる感覚。

布団の中の私は、隣の人に挙動不審。

灯りがなく、真っ暗な周りは、まるで私の心の中。


私は、iPadの電源を入れ、アニメを見ようとした。

そして、今更思った。


い、イヤホン、バックの中だ。


当然、イヤホンがなければ、アニメは見れない。

だって、キャラの声とか、OPやEDを聞かれれば、誰かがいるってことぐらい、すぐにバレる。

場合によっては怒られるかもしれない。

カーテンを開けるかもしれない。


仕方なく、気づかれないように、掛け布団とベッドの間から右手だけを出す。

そして、バッグの場所を確認しようと、手を伸ばした。





ピトッ……。





は?


私の右手は、何かに当たった。

それも、ちょっと柔らかくて温かい、なんとなく生々しい感じ。





違う。

誰か、私に違うって言って。

私の手に触れたのが、リアルの人だって誰か否定して。